Sweetlore世界のお菓子図鑑(234)

ガレットデロワ
Galette des rois
一月に切り分け、フェーヴを探す王の菓子
焼き菓子 / フランス

一切れの中のフェーヴを引き当てた人が、その日の王か女王になる。ガレットデロワを結ぶのは、一つの配合よりも、公現祭の頃に菓子を分けるこの遊びです。北フランスのアーモンド入りの折り込みパイ、南の果実を飾る輪形の発酵菓子、フランシュ・コンテの平たい型。生地が違っても、誰にどの一切れを渡すかという仕組みが、食卓に小さな王国を作ります。
取り分を決める子ども
切り分けた菓子を配り、フェーヴの入った一切れを引き当てた人に紙の王冠をかぶせます。金や銀に輝く軽い王冠は、菓子店や製菓用品店でも用意されます。選ばれた王や女王がもう一人を選べば、同じ食卓に二人の主役が生まれます。
1774年、ジャン=バティスト・グルーズが描いた『王の菓子』では、父親が菓子の取り分を布で隠し、末の息子が誰へ渡すかを指示します。フェーヴのある場所を知らせずに分けるため、王を選ぶ偶然は、生地の中だけでなく配り方にも宿ります。19世紀のアレクサンドル・デュマの料理辞典にも、最年少者へ分配を任せる慣行が登場します。地域によっては、食卓にいない貧しい人のために「神の取り分」を残しました。
Des rois は「王たちの」。公現祭は、キリスト教で幼子イエスを訪れた東方の博士たちを記念し、フランス語では「王たちの日」とも呼ばれました。Galette は、平たい石 galet に由来する丸く平たい菓子の語です。ただしアカデミー・フランセーズの初版辞典が、豆を入れて分ける菓子を記した名は gâteau des rois。Galette des rois が現れるのは第8版で、習慣の歴史と現在の呼称の定着には時間差があります。
北のパイは層で包む
北フランスの代表型は、二枚の折り込み生地でアーモンドのクリームを包みます。粉の生地とバターを折り重ね、途中で冷やして休ませることで、焼成時に水蒸気が層を押し離します。上下の生地を接合する縁へクリームをはみ出させないのは、層の間から漏れるのを防ぐためです。卵を塗った表面へ刃で菱形などを描き、小さな蒸気穴を開けます。中の層まで焼き切ると、薄い皮の歯切れと柔らかな中身が分かれます。
詰め物にはアーモンド、糖、バター、卵を混ぜる型があり、カスタードを加える型では口当たりが変わります。Frangipane の用法には幅があり、アーモンドクリームだけを指す場合と、カスタードを合わせたものを指す場合があります。チョコレート入りなど現代のルセット(材料の配合と作り方)も、今日の選択肢の一つです。
南の輪、サヴォワの香り、東の鍋練り
プロヴァンスの gâteau des rois は、オレンジの花の水を香らせ、砂糖漬け果実と粗い糖を飾るブリオッシュ状の輪です。食用の豆と小像のサントンを二つとも隠す慣行では、豆を当てると王、サントンなら従者となります。王が次の菓子を買う役を担い、菓子を囲む機会が2月2日の聖燭祭まで続く地域もあります。
サヴォワのアルベールヴィル周辺では、アニスの香る発酵菓子が公現祭の主役です。地元のパン職人フレデリック・ローランは、昔はサフランも使ったが高価になったと語っています。彼の店では砂糖漬けオレンジを加え、取材時には焼いた後の小さな切れ目からフェーヴを入れていました。発酵菓子という点は南の輪と同じでも、香りやフェーヴを隠す手順は店と土地で違います。
フランシュ・コンテのガレット・コントワーズは、乳とバターを沸かして粉を練り、冷まして卵を混ぜる、シュー生地に近い型です。オレンジの花を香らせて平たく広げ、表面に模様を描いて焼きます。二枚で包むパイ、発酵で膨らむ輪、鍋で練る平たい菓子。同じ祝いを指す名が、三つの異なる仕事を含んでいます。
ギアナでは次の金曜日を約束する
フランス領ギアナでは、ガレットを分ける季節が公現祭から灰の水曜日までの謝肉祭全体に広がります。生地は折り込みまたは練り込み、中身はアーモンドのペースト、ジャム、カスタードなど。文化省の無形文化遺産調査が記すのは、家庭、職場、学校、団体で、一般に金曜日に分ける慣行です。
豆を当てた人は王か女王を選び、次の金曜日の飲み物と菓子を用意します。一度だけ王を選んで終わるのではなく、当選が次の集まりの役割につながる仕組みです。
ケベックの新年の売り場へ
この祝いはフランス国外の仏語圏にもあります。ケベックのパン菓子店プルミエール・モワソンは、二〇一八年の年末カタログに、通常のガレットデロワとラズベリー・ピスタチオ型を大小二つのサイズで載せました。一月六日の公現祭を祝い、小像を引き当てた人を王や女王とする説明も添えています。祝い方を伝える言葉とともに、分ける人数や中身を選べる季節商品として、北米の売り場にも届いているのです。
ソラマメから集める小像へ
Fève は元来ソラマメを意味します。後には菓子に隠す陶製などの小像も、この名で呼ばれるようになりました。19世紀末の陶製フェーヴは蒐集資料に登場しますが、初出年は資料で揺れ、1870年に一斉に置き換わったわけではありません。食用の豆も残り、人形や動物へ広がった小像には、引き当てる遊びに加えて集める楽しさが生まれました。
古代ローマのサトゥルナリアについても、宴の役割を抽選したという話が後代の文献に伝わります。「一日だけの王」はよく似ていますが、その類似から、現在のアーモンド入りパイの製法まで古代に遡れるわけではありません。
宮廷にできたもう一つの王国
17世紀の宮廷では、菓子の王は現実の身分と異なる王国を作りました。19世紀の歴史家アドルフ・シェリュエルがモットヴィル夫人の回想から伝えるのは、アンヌ・ドートリッシュの席で1648年と1649年に菓子を分けた場面です。1649年には、貧しい人のための聖母の取り分へ豆が入り、それを王妃に割り当てると、一同は「女王が飲む」と声を上げました。
一六八四年の宮廷の遊びでは、複数の食卓がそれぞれ王と女王、大臣や使節を選びます。ルイ14世も、卓を巡る外交ごっこに参加しました。家族の食卓の分配は、宮廷では仮の官職と使節を生む遊戯にもなったのです。
誰が焼き、どんな名で祝うか
王の菓子には、職人同士の商売の争いもありました。シェリュエルの歴史辞典によれば、18世紀初め、パン職人が顧客へ菓子を贈る慣行に、菓子職人が自分たちの領分を侵すと訴えました。パリの法院が、バターや卵を使う菓子作りなどをパン職人へ禁じても、地方では贈答が続いたとされています。菓子を分ける側の楽しみと、焼く権利を持つ職人組織の歴史が交わる場面です。
革命期には、菓子の「王」そのものが問題になりました。1794年のパリの委員会文書を紹介する法律家の調査には、フェーヴ入りを作る職人が旧王制を祝っているのではないかと警戒し、製造・販売の監視を求めた記録があります。一方、「平等のガレット」と呼び直し、共和政の帽子をかたどるフェーヴを使ったという話も、大学の文化解説に伝わります。王を選ぶ遊びは、菓子の名前や小さな飾りにまで政治の影を映しました。
現在の家庭、職場、学校には分け合う習慣が続く一方、大統領府では王を作りません。エリゼ宮の2024年の公現祭の式辞は、共和国の場としてフェーヴを入れていないことに触れています。菓子を囲む行為を残しながら、誰かを王にするかどうかは、その場が持つ意味に応じて変わっています。
用語解説
- アドルフ・シェリュエル
- 十九世紀フランスの歴史家。制度・慣習の辞典に王の菓子の史料を集めた。
- モットヴィル夫人
- アンヌ・ドートリッシュに仕えた女性。宮廷で菓子を分ける場面を回想に残した。
- アンヌ・ドートリッシュ
- フランス王ルイ十三世の王妃、ルイ十四世の母。王の菓子を囲む宮廷の回想に登場する。
- ルイ十四世
- 十七〜十八世紀のフランス王。宮廷での王の菓子の遊びに参加したと史料に伝わる。
- 公現祭/Épiphanie
- 一月六日を中心に、東方の博士たちが幼子イエスを訪れたことを記念するキリスト教の祝日。
- ガレット/galette
- 丸く平たい菓子の語。アカデミー・フランセーズは平たい石を表す galet に由来すると説明する。
- フェーヴ/fève
- 元はソラマメ。菓子に隠す陶製などの小さな品も指す。
- ジャン=バティスト・グルーズ
- 1774年の『王の菓子』で、家族が菓子を分ける場面を描いた画家。
- アレクサンドル・デュマ
- 19世紀の『料理大辞典』で、王の菓子の取り分と分配の慣行を記した作家。
- フランジパーヌ/frangipane
- アーモンドを使う詰め物の名称。アーモンドクリームとカスタードを合わせる配合など、用法に幅がある。
- サントン/santon
- プロヴァンスの王の菓子にも入れられる小像。この地域の慣行では食用の豆と役割を分ける。
- サトゥルナリア
- 古代ローマの冬の祭礼。宴の王と現代の抽選を結びつける説があるが、現在の菓子の製法が連続する証拠ではない。
- フレデリック・ローラン
- アルベールヴィル周辺のパン職人。アニスの発酵菓子とサフランの旧習を取材で伝える。
- プルミエール・モワソン
- ケベックのパン・菓子の製造販売者。新年向けのガレットデロワも扱う。
調査注記
宮廷の場面はシェリュエルが回想と1684年の雑誌から集成したもの。遊びの記録であり、当時の配合を証明しない。革命期の販売監視の文書と「平等」の改称を伝える後代解説は別の性格を持ち、全家庭が同時に同じ名前へ変わったとは断定していない。ケベックの例は2018年カタログの具体的販売記録で、現在の全商品・全店舗への恒常販売や当地への伝来年を示すものではない。







