Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

カノム・モーケン
Khanom Mo Kaeng
ヤシ糖と揚げエシャロットが香る、タイの焼き菓子
ケーキ / タイ・ペッチャブリー

カノム・モーケン(Khanom Mo Kaeng/ขนมหม้อแกง)は、卵とココナッツミルク、糖を合わせ、表面に焼き色をつけたタイの菓子です。カスタードに似たしっとりした生地に、緑豆やタロイモなどを加えるものがあります。薄い褐色の焼き面と、揚げたエシャロットの香りが、乳と卵を使う西洋のプリンとは異なる印象をつくります。
とりわけ中部のペッチャブリー県は、この菓子の名産地です。モーケンは浅い容器に焼いて売る姿でも知られ、切り分けると、焼き色のついた上面の下に豆やいもを含んだしっとりした生地が現れます。

浅い容器に焼いたモーケン。上面に揚げエシャロットが散る。2011年、タイ北部ウッタラディットの市で撮影。 写真:Takeaway / CC BY-SA 3.0 / 原図、改変なし。
ペッチャブリーの糖は何からできるか

ペッチャブリーのサトウヤシが立つ景観。2009年12月26日撮影。
写真:SIAMSEARCH/CC BY 3.0/原図。原寸・改変なし。
かつてペッチャブリーでは、煮詰めたヤシ糖を小さな陶器の壺に詰めて売っていました。口のすぐ下まで余白を残すのは、重ねた壺同士が糖でくっつくのを防ぐためです。
ペッチャブリーでは、県内に多いサトウヤシから採れる糖が菓子づくりを支えています。バンラート地区のパームシュガーは、地域のカノム・モーケンを説明するときに欠かせない材料です。糖を採るサトウヤシと、ココナッツミルクの原料になるココヤシという、2つのヤシの恵みが生地に入ります。
糖は甘味を加えるだけでなく、地域の味の違いを担います。白砂糖だけで作る菓子と、土地のヤシ糖を使う菓子では香味が異なり、ペッチャブリーの菓子はその糖の個性と結びついて知られるようになりました。糖の組み合わせや、生地に加える豆といもの選び方には、店や家庭ごとの違いがあります。
豆を加え、表面を焼く
緑豆を使うモーケンは、豆を柔らかくしてから卵やココナッツミルクと合わせます。卵液をそのまま蒸して固めるカスタードとは違い、加えた豆の粒やでんぷんも生地に入ります。タロイモを使うもの、卵を中心にしたものもあり、卵のなめらかさに、豆やいもの厚みが重なります。
緑豆入りのルセット(材料の配合と作り方)には、合わせた生地を真鍮の鍋で練ってとろみをつけ、浅い四角い型に移して上火で焼く作り方があります。先に鍋で濃度をつけ、次に上面へ焼き色をつける、2段階の加熱です。揚げエシャロットを散らし、冷ましてから四角く切り分けます。タロイモ入りの配合には米粉やパンダンを加える例もあり、豆といもで生地の組み立てが変わります。
エシャロットは単なる飾りではありません。生地に糖とココナッツの甘い香りがあり、その表面に揚げた香味野菜が重なります。甘味と揚げ香を合わせることが、この菓子の特徴の一つです。
宮廷菓子をめぐる伝承と、土地の名物
モーケンの由来は、アユタヤ時代の宮廷と、ターオ・トーンキープマーとして知られるマリア・ギマールに結びつけて語られます。彼女はポルトガルにつながる卵菓子の文化をタイへ伝えた人物として知られ、モーケンもその系譜に数えられることがあります。
クムパマートという別名には、「黄金の鍋」に結びつく伝承もあります。現在の豆入りやいも入りの配合の成立は明らかでありませんが、宮廷と卵菓子を結ぶ物語は、モーケンの由来として語り継がれています。今日のモーケンは、こうした宮廷菓子の記憶に加え、地方で手に入る豆やいも、ヤシ糖、持ち帰りの販売形態を含めて育ってきた菓子です。
用語解説
- パームシュガー
- ヤシ類から得る糖の総称。この記事ではペッチャブリーのサトウヤシ由来の糖を中心に扱います。
- エシャロット
- 小型の香味野菜。モーケンでは揚げたものを表面に散らす作り方があります。
- ルセット
- 材料の配合と作り方をまとめたもの。
- ターオ・トーンキープマー
- マリア・ギマールに結びつけられる称号。アユタヤの宮廷とタイの卵菓子の歴史で語られる人物です。







