Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

キングコング
King Kong
乳、パイナップル、ピーナッツを重ねるペルーの大型菓子
焼き菓子 / ペルー・ランバイエケ

キングコング(King Kong)は、ペルー北部のランバイエケに結びつく大きな積層菓子です。焼いたビスケット状の生地の間に、乳と糖を煮詰めたマンハル・ブランコ、パイナップルの甘い餡、ピーナッツの餡などを重ねます。映画と同じ名を持ちますが、菓子の構造は、大きなアルファホールとして見ると分かりやすくなります。
厚みのある塊を切ると、淡い色の焼き生地と複数の餡が交互に現れます。外側をクリームで飾るのではなく、内部の層がそのまま菓子の見た目になります。乳の濃厚さ、果実の酸味を伴う甘さ、ナッツの味を、一つの切片の中へ収めた菓子です。

マンハル・ブランコ、パイナップル、ピーナッツの3種類を使うものの構成を示す模式図。層数・厚み・順序は説明用で、特定製品の設計図ではない。 出典。図:Sweetlore。
大きなアルファホールという構造
アルファホールは、焼いた生地で甘い餡をはさむ菓子です。キングコングはこの構成を大きくし、複数の餡を重ねたものとして知られます。四角い製品が多いものの、円形もあり、大きさや層数が一つの規格に決まっているわけではありません。
マンハル・ブランコは、乳と糖を煮詰めた甘いペーストです。粘りのある餡を焼き生地の間に塗り、果実も甘く煮た層として重ねます。淡い乳の層と、果実やナッツの餡が、切り分けた断面をつくります。
餡の組み合わせには、マンハル・ブランコだけ、乳とパイナップル、3種類の餡という製品の違いがあります。さらにパッションフルーツ、ルクマ、チリモヤなどを組み合わせる製品もあります。同じ名称のまま、はさむ餡の種類を変えられる構成です。
映画の名を得た菓子
菓子の名は、大きさとずっしりした姿を映画の巨大なゴリラに重ねたことに由来すると伝わります。老舗サン・ロケの沿革では、ビクトリア・メヒア・デ・ガルシアと仲間の女性たちが、1920年代にランバイエケのサン・ロケ通りで菓子を作り、困窮する高齢者を支える資金を集めたと説明されています。
同社が伝える筋では、その菓子は映画『キング・コング』が上映された1933年に、住民から映画と同じ名で呼ばれるようになりました。映画の名が付く前から、女性たちが作る大型の菓子は町で売られていた、という沿革です。
その後、ビクトリアの娘ペルペトゥアが家業を継ぎ、1970年には生産の場が専用工場へ移りました。こうして工場での生産も発達し、今日では複数の製造者が作るランバイエケの菓子として広まっています。
切り分ける菓子と、地域の祭り
大きな包装の製品と、持ち運びやすい小型のバーは、同じ積層の考え方を違う寸法にしたものです。家庭で切り分けることも、贈答や旅の土産にすることもできます。個別包装が増えても、断面の重なりが菓子の特徴であることは変わりません。
ランバイエケでは7月後半、独立記念の時期にキングコングを主題にする催しが開かれます。生産者団体が自治体などと協力し、製造の実演、販売、巨大な菓子の制作を行います。大きな一つを共同で作り、切って分けるという菓子の姿が、祭りの催しにもつながっています。
用語解説
- アルファホール
- 焼いた生地で甘い餡をはさむ菓子。地域によって生地や餡、形に違いがあります。
- マンハル・ブランコ
- 乳と糖を煮詰める甘い餡。
- ビクトリア・メヒア・デ・ガルシア
- サン・ロケが伝える沿革で、1920年代の菓子づくりの中心となった女性。
- サン・ロケ
- ランバイエケのキングコングの製造者。菓子一般の歴史と、同社の沿革を分けて扱います。







