Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

モハンタール
Mohanthal
粉をなめらかにしすぎない
砂糖菓子 / インド・グジャラート、ラージャスターン

モハンタール(Mohanthal/મોહનથાળ)は、ひよこ豆粉をギーで炒め、砂糖の蜜と合わせるインドの菓子です。グジャラートやラージャスターンで親しまれ、厚めに固めて角形やひし形に切るものも、柔らかいまま器からすくうものもあります。炒った豆の香りが広がり、なめらかな生地の中に細かな粒が残る、ほろりとした口当たりが特徴です。

角形に切ったモハンタール。撮影:Dkgohil、2015年、撮影地不明。原画像を使用(出典・CC BY-SA 4.0)。
粒を作ってから炒める
材料の中心になるベサンは、ひよこ豆を挽いた粉です。モハンタールでは、この粉に少量のミルクとギーをすり混ぜ、細かな塊を作る下ごしらえがあります。ダーボと呼ばれるこの工程でできた塊を粗いふるいに通し、粒の大きさを整えてから炒めます。この粒が、できあがりの生地にほろりとした食感を残します。
ギーを溶かした鍋でこの粒を混ぜながら炒め、薄い褐色と香りを引き出します。ギーはバターなどから水分や乳の固形分を除いた乳脂肪です。作り方によっては、ここにミルクを煮詰めたマーワを加え、乳製品の風味を重ねます。サフランやカルダモンで香りを付け、アーモンドやピスタチオ、チャロリを散らすものもあります。

器に入ったギー。撮影:Neha Sonal、2015年、撮影地不明。原画像を使用(出典・CC BY-SA 4.0)。
グジャラートのシャー家では、ディワーリー用のモハンタールに、別に炒ったマーワを加えてから蜜と合わせます。この家ではマーワは省ける材料としながら、祭りには入れるといいます。マーワを加えるものはラージャスターンの作り方と説明されることもありますが、グジャラートの家庭にも、このように加える例があります。
蜜を合わせ、冷まして切る
代表的な作り方では砂糖を水と煮て蜜にし、炒めた粉と混ぜます。蜜を粉に加える作り方も、蜜に炒めた粉を加える作り方もあります。とろりとした蜜と豆粉を合わせ、濃くなるまで混ぜたら、ギーを塗った皿に広げます。冷めて落ち着いたところを切ると、贈り物や供物として分けやすい形になります。仕上がりの固さは作り方によって異なり、温かいうちに食べる例もあります。
マイソール・パックやラドゥ、マガジとの違い
同じベサン、ギー、砂糖を使う菓子でも、マイソール・パックや、丸くまとめるラドゥとは作業が異なります。マイソール・パックには、蜜と粉を合わせて油脂を加え、蜂の巣のように小さな穴の開いた組織に仕上げるものがあります。粒を作るモハンタールとは、同じ豆粉の菓子でも切り口の様子が異なります。前述のシャー家が作るマガジは、炒った豆粉と木の実を冷まして粉砂糖を混ぜ、丸めて作ります。蜜を煮る工程がない分、モハンタールとは砂糖の加え方が異なります。ただしマガジにも角形や粒のあるものがあり、形だけで見分けられるわけではありません。

丸くまとめたベサン・ラドゥ。撮影:Moulikjoshi91、2015年、撮影場所は出典の位置情報に基づきインド・ウッタラーカンド州。原画像を使用(出典・CC BY-SA 4.0)。
祝いの皿と供物
モハンタールは婚礼の食事やディワーリーの贈り物に用いられ、クリシュナへの供物として作られることもあります。クリシュナの誕生を祝うジャンマシュタミーや、ナヴラートリの時期にも作られます。シュリナートジーを信仰する人々へ供物の作り方を紹介するシュリナートダームでは、春の祭りバサント・パンチャミーにモハンタールを作り、菱形に切ってサラスワティー女神とクリシュナに供える例を紹介しています。名の由来については、クリシュナの別名モハンに結び付ける言い伝えがありますが、菓子がいつ生まれたかを示すものではありません。
飾りや固さには家庭や職人ごとの違いがあり、切って配る皿にも、柔らかい供物にもそれぞれの作り方があります。グジャラートのアーナンド周辺の七つの製造店でも、豆粉、ギー、ミルクの配合や炒る時間はそれぞれ異なります。州ごとに一つの配合が決まっているわけではありません。

インド・ハイデラバードのWikiConference India 2023で、菓子卓に供されたモハンタール。撮影:Wasiul Bahar、2023年。原画像を使用(出典・CC BY-SA 4.0)。
用語解説
- ベサン
- ひよこ豆を挽いた粉。インドの甘味にも塩味の料理にも使われます。
- ギー
- バターなどを加熱し、水分や乳の固形分を除いて得る乳脂肪。
- ダーボ
- ここでは、ベサンに少量の乳やギーをなじませ、粒状に整える下ごしらえ。
- マーワ
- 乳を煮詰め、固形分を濃くしたもの。コヤとも呼ばれます。
- チャロリ
- インドの菓子に使われる小さな木の実の種仁。チロンジとも呼ばれます。
- ジャンマシュタミー
- ヒンドゥー教でクリシュナの誕生を祝う祭り。
- ナヴラートリ
- 女神をたたえる九夜の祭り。
- クリシュナ
- ヒンドゥー教の神。誕生祭や供物の話に登場します。
- シュリナートジー
- クリシュナの姿の一つとして信仰される神格。
- サラスワティー
- 学問や芸術に結びつくヒンドゥー教の女神。







