Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

ピアヤ
Piaya
ネグロス島の砂糖を、薄い皮の間へ
焼き菓子 / フィリピン・ネグロス島

ピアヤ(Piaya)は、フィリピンのネグロス島、とくにバコロドやネグロス・オクシデンタル州に結びつく平たい菓子です。小麦粉の生地でマスコバド(muscovado)と呼ぶ褐色の砂糖を包み、薄くのばして鉄板などで焼きます。パンのように厚く膨らませるのではなく、薄い皮と甘い中心を重ねた姿が特徴です。
外側にごまを付けるものもあり、焼き上がりには、香ばしい表面と糖を含む内部との違いが生まれます。大きく見えても厚みは少なく、丸い生地の端まで糖を閉じ込める手仕事が味と形を支えています。

ニューマンのルセットをもとにした工程の模式図。糖を包んだ後に平たくのばし、両面を焼く順序を示す。 出典。図:Sweetlore。
発酵させずに、薄く焼く
ピアヤは、発酵で膨らませない平パンの一種として説明されます。生地を小分けにし、糖を包んで閉じた後に、もう1度薄くのばします。餡を平たい生地2枚で単にはさむだけでなく、包んだものを一体のまま圧して薄くする作り方です。
料理家ヤスミン・ニューマンのルセット(材料の配合と作り方)では、冷たいバターを粉へ混ぜ、水を加えて生地にします。中へ入れるマスコバドには少量のグルコースシロップを合わせ、硬い塊が皮を破らないようにほぐしておきます。包んだ部分にも穴を残さず、やさしくのばすのは、焼く間に糖が外へ漏れるのを防ぐためです。
ニューマンは、糖を包んだ生地を約2ミリにのばして両面を焼きます。薄い生地の両側へ熱を当てると、外側は色づき、内側の糖も温まります。油脂にバターを使うこの配合のほかにも、作り手ごとに異なる生地があり、餡の量やのばす厚さによって皮の歯触りも変わります。
マスコバドの菓子から、土産菓子へ

ネグロス・オクシデンタル州ラ・カルロタの畑と製糖所。2023年10月20日撮影。サトウキビ糖の産地が持つ生産風景。
写真:Patrickroque01/CC BY-SA 4.0/原図。配信元の表示用縮小画像、追加加工なし。
マスコバドは糖蜜の風味と色が残るサトウキビ糖です。ネグロスは砂糖づくりと深く関わる地域であり、ピアヤでは糖そのものが餡の中心になります。皮を破ると現れる甘い層に、サトウキビ糖の香りが集まります。
ピアヤは、旅先から家族や知人へ持ち帰るパサルボンの菓子としても広がりました。パナイ島カリボでピアヤを作るカリボ・フード・ハウズについては、2018年の科学技術省の事業報告に、包装材とラベルを改良した取り組みが記されています。焼いた1枚を箱や袋へ収めて遠くへ届ける仕事も、土産菓子としてのピアヤを支えています。
ピアヤづくりはネグロス島の外にも広がっています。国内の別の地域でも焼かれ、海外へ移住した料理人も、バコロドの味として作り続けています。贈る相手のもとへ持ち帰るパサルボンの習慣が、糖の産地に結びつく菓子を遠くへ運びます。
同じ円盤でも、中身と薄さが変わる
伝統的なマスコバド餡のほかに、ウベという紫いもを用いるピアヤもあります。糖を主役にした中心と、いものペーストを使う中心では、生地の中に収まるものの状態が変わります。ウベでは、いもの風味とペーストの食感が加わります。
また、小型のピアイートは薄くぱりっとした菓子として扱われます。大きなピアヤをそのまま縮小しただけではなく、薄さと焼き上がりの歯触りを楽しむものです。土産の箱に入る1枚も、焼きたての1枚も、中心を包んでから平たくのばすという手順を共有しながら、寸法や餡、包装によって異なる食べ心地になります。
用語解説
- マスコバド(muscovado)
- 糖蜜の色と風味を残した褐色のサトウキビ糖。
- ルセット
- 材料の配合と作り方。
- パサルボン
- 旅先などから家族や知人へ持ち帰る土産を指すフィリピンの言葉。
- ウベ
- フィリピンの菓子で広く用いられる紫色のいも。







