Sweetlore世界のお菓子図鑑(234)

プリンセストータ
Prinsesstårta
緑のマジパンの下にクリームを重ねるスウェーデンのケーキ
ケーキ / スウェーデン

緑の滑らかなドームへ、粉砂糖と小さなバラ。プリンセストータは、スポンジ、バニラのカスタード、ホイップクリームを重ね、アーモンドと砂糖のマジパンで包むスウェーデンのケーキです。丸みを作るのは型で焼いた生地だけではなく、内側に高く盛るクリーム。王女たちの名を持つ一台は、家庭の誕生日や結婚式、方言を祝う日にも登場します。
王女が学んだ家政と、「緑のケーキ」
料理教師イェンニー・オーケルストレムは、一九〇七年にストックホルムで家政学校を開きました。料理のほか、掃除、洗い物、幼い子どもの世話も教える学校です。一九二〇年代には、カール王子とインゲボリ王女の娘、マルガレータ、マッタ、アストリッドの三姉妹が通いました。王女たちとのつながりは、裕福な家庭の娘たちが学ぶ学校と、全国で読まれる料理書の名声を高めました。
オーケルストレムの「グローン・トータ」、緑のケーキを三姉妹が好んだため、「王女のケーキ」と呼ばれるようになったと伝わります。緑のケーキのルセット(材料の配合と作り方)は、オーケルストレムの『Mera god mat』一九三九年刊に残っています。そこでは果実のジャムを挟まず、色を付けたアーモンドの練り物を外皮にしています。よく結び付けられる一九二九年刊『Prinsessornas kokbok』とは別の本です。
店の菓子としては、一九三六年一月二十四日の新聞『Dagens Nyheter』に、すでにKonsumの広告が登場します。マジパンで包む姿は、料理書の一九三九年より前から販売されていました。一方、一九二四年の同名菓子は、クリームを絞り、刻んだアーモンドやピスタチオで飾るものです。「王女のケーキ」という名のすべてが、初めから緑のドームだったわけではありません。王女にまつわる伝承と、店頭で育った名前や姿が、現在の一台に重なっています。
三つの仕事を、組立ての前に済ませる
スポンジには、全卵と砂糖を温めてから泡立てる方法があります。全卵を約60度まで温め、湯煎から外して冷めるまで泡立てると、白く軽い生地になります。粉を三回に分けて折り込み、最後に少量の溶かしバターを合わせて焼きます。焼けたスポンジは完全に冷まし、三枚に切り分けます。
バニラクリームは、牛乳、濃いクリーム、卵黄、砂糖、コーンスターチにバニラのさやと種を合わせ、混ぜながら炊いてとろみを付けます。炊き上がりを濾して別の器へ移し、冷水に当てながら混ぜて冷まします。スポンジを焼く工程とクリームを冷やす工程を先に済ませておくと、その後の組み立てに進みやすくなります。
三枚のスポンジを、丘へ変える
下段のスポンジへバニラクリームを塗り、次のスポンジを重ねます。中段でもクリームを中央に高く盛り、最後のスポンジをのせます。その上にホイップクリームをさらに盛り、側面にも塗り広げて、全体を柔らかな丘の形へ整えます。内側のクリームの小山と、表面を覆うホイップクリームが、段階を追って丸い形を作ります。
最上段のスポンジを切り口が上になるように返してのせる組み立て方もあります。焼いたスポンジ、炊いたクリーム、泡立てたクリームは、それぞれ独立した工程で作り、最後に一台へ合わせます。
緑のマジパンは、ケーキ全体を覆える大きさの円形に薄くのばします。ドームにかぶせ、手で側面へ沿わせてひだを取り、裾の余りを切り落とします。粉砂糖を振り、ピンクのマジパンで作ったバラと、緑の葉を添えれば、よく知られた姿になります。
一人分のドームと、カエルの顔
一人分の小さな菓子は、プリンセスバケルセ(prinsessbakelse)と呼ばれます。小さくしても、クリームの丸みをどう支えるかが仕事の中心です。乳業会社Arlaの小型ルセットでは、薄いスポンジにバニラクリームとラズベリージャムを塗り、それぞれ冷凍してから円く抜きます。シリコンの半球型へホイップクリームを絞り、スポンジを底として押し込み、凍らせて型から外してマジパンをかぶせます。大きな一台を切り分ける代わりに、逆さまに組み立てた小さなドームを一人ずつに渡す方法です。冷蔵または冷凍しておき、粉砂糖は食べるときに振ります。
緑の外皮は、カエルを意味するグローダ(groda)にも変わります。ウメオの菓子店Ullas Kondisでは、スポンジにバニラクリームとイチゴ風味のホイップクリームを合わせ、薄い緑のマジパンで覆います。同じ名でも中身は作り手によって異なり、すべてが一つの標準配合ではありません。王女のための滑らかなドームと、顔を作った小さな動物は、アーモンドの外皮を造形する仕事でつながっています。
ジャムと、祝いの色
古い緑のケーキにはジャムがなく、下層へジャムを加える型をオペラトータと区別する呼び方があります。これは、コーヒーやチョコレートを重ねるフランスのオペラとは別の菓子です。
一方、現在はプリンセストータの名でも、ラズベリーの実やジャムを加えることがあります。ラズベリーを下段のカスタードに散らすと、クリームの層へ果実の酸味が加わります。外皮の色にも広がりがあり、業界団体は2012年の王室の洗礼を祝う催しで、ピンクのケーキをプリンセストータとして販売し、寄付につなげました。緑の外皮とバラという定番に、祝いの場ごとの色や味が重なっています。
一週間の支援と、一日の方言
9月の最終週には、製パン・製菓業界によるプリンセストータ週間が設けられ、ケーキの販売を子どもたちへの支援に結び付けてきました。
スモーランドでは、3月最初の木曜日を祝う新しい習慣にも、このケーキが登場します。標準語の första torsdagen i mars、すなわち「3月最初の木曜日」が、地域の発音では fössta tossdan i mass になります。marsipantårta(マジパンのケーキ)も massipantåta。特定の子音の前でr音が弱まったり消えたりする、共通の響きを楽しむのです。緑のケーキに祝いの言葉を書き、方言と土地への親しみを表します。この行事は2025年、スウェーデン国内の無形文化遺産の一覧に加えられました。
用語解説
- イェンニー・オーケルストレム
- スウェーデンの料理教師・料理書著者。王女たちにも家政を教えた。
- マルガレータ、マッタ、アストリッド
- オーケルストレムに学んだ三姉妹の王女。ケーキの名にまつわる伝承に登場する。
- マジパン
- アーモンドと砂糖を練った材料。薄くのばしてケーキを覆い、花なども成形する。
- 湯煎
- 器を湯に当て、間接的に温めること。
- コーンスターチ
- トウモロコシから得るでんぷん。ここではクリームのとろみを付ける。
- Konsum
- スウェーデンの協同組合系の小売店名。1936年のケーキ広告に現れる。
- プリンセスバケルセ
- プリンセストータを一人分の大きさに仕立てた菓子。
- グローダ
- スウェーデン語でカエル。緑のマジパンを使ってカエルの形に仕立てる小型菓子の名でもある。
- スモーランド
- スウェーデン南部の地方。地域の方言を祝う「3月最初の木曜日」の習慣がある。







