Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

トルタ・テネリーナ
Torta tenerina
トルタ・テネリーナの材料と製法
ケーキ / イタリア・エミリア・ロマーニャ州フェッラーラ

トルタ・テネリーナ(Torta tenerina)は、イタリア北部フェッラーラのチョコレート菓子です。薄く焼き上げた生地の表面には軽い皮ができ、内側はしっとりと柔らかいのが特徴です。濃いチョコレートの味と、口の中でほどける中心の食感を楽しみます。
ダークチョコレート、バター、卵、砂糖を主に使い、粉は少量にとどめます。チョコレートとバターを溶かし、卵黄を合わせた生地に泡立てた卵白を混ぜて焼く作り方があります。この作り方では膨張剤に頼らず、薄い菓子に仕上げます。ある菓子職人のルセット(材料の配合と作り方)では、小麦粉の代わりにじゃがいものデンプンを使っています。粉の種類や卵の混ぜ方には、作り手ごとの違いがあります。卵白の泡を加えると生地に空気が入り、少ない粉でも焼いた形を支えられます。一方で焼きすぎれば、中心の柔らかさは失われやすくなります。


フェッラーラでは、方言で「粘りつくような」という意味を持つタコレンタとも呼ばれます。その名は、中の柔らかな食感に結びついています。粉糖を薄く振って供されることもあれば、カスタードクリームやマスカルポーネのクリームを添えることもあります。
フェッラーラ市の地域産品の登録にも、この菓子が取り上げられています。市の2024年の紹介は、上の薄い皮と柔らかな中心を特徴として挙げ、地域に伝わる食の一つとして記録しています。
別名には「モンテネグロ王妃の菓子」もあります。イタリア王ヴィットーリオ・エマヌエーレ3世の妃エレナ・ペトロヴィッチに捧げて作られたという話が伝わり、王妃の優しい心を菓子の柔らかさになぞらえた話です。王妃にちなむ呼び名の由来として伝えられる話であり、誰がいつ初めて焼いたかまで確定するものではありません。
用語解説
- ヴィットーリオ・エマヌエーレ3世
- イタリア王。王妃エレナの夫。
- タコレンタ
- フェッラーラの方言で、粘りつくような食感を表す呼び名。
- エレナ・ペトロヴィッチ
- モンテネグロ出身のイタリア王妃。菓子の別名と伝承に登場する。
- ルセット
- 材料の配合と作り方。







