Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

チェリョームハのトルテ
Cheremukhovy tort
果実を粉にして生地へ
ケーキ / ロシア、シベリア

暗い色の生地を切ると、アーモンドを思わせる香りが立ちます。チェリョームハのトルテは、乾燥させて挽いたバードチェリーの果実を生地に使うケーキです。シベリアで親しまれる果実の粉が、層の一枚一枚に風味を与えます。
果実を粉にして生地へ
チェリョームハは、ロシア語でバードチェリーを指します。ロシアの食品メーカーには、エゾノウワミズザクラ(Prunus padus)の乾燥果を挽いた食用粉を販売する例があります。果実を乾かして挽いた粉は、見た目も香りも白い小麦粉とは違います。ケーキに使うときは、小麦粉と組み合わせて焼く方法があり、果実の香りを生地に加えられます。
ある家庭のレシピでは、ヨーグルトまたはケフィアに砂糖と卵を混ぜ、チェリョームハの粉、小麦粉、膨張剤を加えて焼きます。冷ました生地を切り、砂糖を混ぜたサワークリームを挟んで冷蔵庫で休ませます。粉の香りを持つ生地と、乳の酸味を持つクリームが重なり、濃い色と白い層の対比も生まれます。
2005年のロシアの雑誌には、果実の粉を牛乳と煮て冷まし、卵、砂糖、小麦粉などを加えて焼くレシピも載っています。焼いた生地を横に切り、砂糖を加えたスメタナを挟む方法です。粉をそのまま混ぜるのか、先に乳で温めるのかでも、生地の準備は異なります。

果実と乳の組み合わせ
乾燥果の粉は、ケーキのほか、パイの詰め物や飲み物にも使われてきました。生の果実を乾燥させて保存し、粉として菓子にも使います。
バイカル周辺の古くからの住民の聞き書きには、集めたチェリョームハを乾燥させ、粉にするため製粉所へ運んだ話が残っています。クラスノヤルスク地方のある女性は、1996年にも古い製粉所へ挽きに行ったと語っています。冬のパイに使ったという話もあり、果実の粉はケーキに限らず土地の台所に根づいていました。
果実の粉は、生地に濃い色と香りを与えます。小麦粉の一部を置き換えたスポンジ生地の試験では、粉を増やすほど色と香りが強くなり、小麦粉の20%を果実の粉に替えた配合では、苦味や粒の歯ざわりも感じられました。
同じ乳の酸味を使うスメタンニクにも層のケーキがありますが、チェリョームハのトルテには果実の香りが特徴的です。作り方は家庭ごとに異なり、酸味のある乳製品の選び方や生地の厚さによっても、印象が変わります。
用語解説
- チェリョームハ
- ロシア語でバードチェリーを指す名。菓子には乾燥果を挽いた粉が使われる。
- スメタナ
- 酸味のある発酵クリーム。
- ケフィア
- 乳を発酵させた、酸味のある飲料。







