Sweetlore世界のお菓子図鑑(234)

スコーン
Scone
粉とバターの生地を焼き、紅茶の時間に開く菓子
焼き菓子 / イギリス

横に割った温かな生地へジャムとクロテッドクリームを載せると、スコーンは一杯の茶に寄り添う菓子になります。しかし、甘さを控えた英国型から具や糖衣の豊かな北米型、砂糖も卵も入れないニュージーランド型まで、その名が包む範囲は広い。冷たいバターの片、粉と液体の量、天板での間隔という小さな選択が、一個の層や歯切れを変えています。
鉄板の一枚からオーブンの一個へ
スコットランド語辞典が古い語形として挙げるのは、一五一三年の「四角い菓子」です。中期オランダ語 schoonbrot(上等なパン)との関係が説明されるものの、語源には複数の候補があります。十八世紀以後には、麦や大麦の粉を丸くまとめて鉄板で焼き、三角に切るスコーンの用例も現れます。今日の、厚い一個をオーブンで短く焼く姿だけが、この名の歴史ではありません。
鉄板で焼く大きな一枚から、よく膨らんだ一個を炉で焼く型へ。その変化を支えた材料がベーキングパウダーです。ニュージーランドの製パン技術資料は、膨張剤の登場によって現在のオーブン型が育ったと説明します。鉄板で焼く型も消えずに残り、名前の中には古い火入れと新しい火入れが共存しています。
英語の発音にも一つの形だけはありません。scone には、短い母音の「スコン」に近い /skɒn/ と、二重母音の「スコウン」に近い /skəʊn/ があり、ケンブリッジ辞典は英国語に両方を載せます。発音を材料や品質の違いと結び付けるものではなく、同じ菓子を呼ぶ言葉の幅です。
甘さを生地に入れるか、食卓で添えるか
英国型は控えめな甘さのプレーンな生地を基本とし、レーズンやカランツを少量含む場合があります。北米のカフェで見る型は、果実やナッツ、チョコレートを多く混ぜ、上掛けを施すこともあります。北米型は三角形であることが多い一方、英国型にも三角形があるため、輪郭だけで国や配合を決めることはできません。
果実やナッツは液体より先に粉の混合物へ入れる方法があります。果汁の多い生果実は生地を湿らせすぎるため、先にローストして汁を濃縮する選択肢もあり、乾燥果実を加える場合とは水分の扱いが異なります。
スコーンの甘さが控えめな仕立てでは、添えたジャムとクリームが味を完成させます。外側だけをかじる場合と、割った面へ塗る場合では、生地とのなじみ方も違います。クロテッドクリームの濃い乳の風味が、焼いた粉の香りと果実の酸味をつなぎます。
冷たい油脂と粉の選択
バターを使う型では、冷たい油脂を粉へ合わせ、平たい小片を残すことがあります。油脂が細かく均一に分散する場合と、板状に残る場合では焼いた後の層の出方が変わります。液体を加えた後は短時間でまとめ、扱いすぎて硬くなるのを避けます。材料の多い北米型と、具の少ない英国型では、まとめるための液量や混ぜ方にも違いが生じます。
粉の種類を替えれば、必要な液量も変わります。キングアーサーの製法例では、同社のオールパーパスフラワーは高さと形を保ちやすく、ケーキフラワーへの置換は低めで繊細な仕上がりになります。後者へ替える場合は液体を大さじ一〜二杯減らし、まとまる分だけ使う指針です。米国の粉区分は、日本の中力粉や薄力粉と完全に同じではありません。
膨らむ時機を逃さず、短く焼く
ベーキングパウダーは、重曹と反応相手の酸性の成分を含み、水分や熱で気体を生じます。パンのように酵母の発酵を長く待つ代わりに、混ぜて成形し、焼く間に生地を持ち上げる方法です。粉と一緒に膨張剤をよく分散させ、液体を入れたら扱いすぎず、成形後は長く待たせず焼きます。放置による気体の損失は、膨張剤の種類と生地の温度でも変わります。
セルフレイジングフラワーは、膨張剤をあらかじめ混ぜた粉です。この粉を使うルセット(材料の配合と作り方)では、普通の粉に替える場合と違い、膨張剤を重ねて入れないよう材料表を読みます。生地の硬さをそろえる液量の調整と、膨らませる材料の確認は、別々に必要な仕事です。
クリームの油脂、隣り合う生地の側面
また、バターを使わずクリームで油脂と水分を補う型もあり、「粉へバターをすり込むこと」だけがスコーンの定義ではありません。生地同士を近づけて焼けば側面は柔らかくなり、離して焼けば外側の歯切れが増します。添えるジャムや乳のクリームの文化を含めながらも、食感そのものは、油脂の形、液量、混ぜる程度、天板の上の間隔といった具体的な条件から作られています。
円板を切るほか、すくった生地を直接天板へ落とす成形もあります。同社の製法例では、濃い焼き色だけを目指さず、割った中身が生の生地ではなく、湿りを残して焼けた状態かを確かめます。
無糖の生地を布で包むニュージーランド
ニュージーランドのエドモンズの基本の配合は、粉、ベーキングパウダー、塩、バター、牛乳を使い、砂糖と卵を材料表に含みません。粉へ油脂を細かく合わせ、ナイフで牛乳を素早く混ぜ、二センチほどの厚さへ整えて切ります。焼いた後は布で包み、柔らかさを保つ方法です。
同社は、ジャムやクリームなどを添えるため、生地は無糖と説明しています。卵を混ぜ、具や糖衣まで盛り込む北米の型と比べると、甘さを生地へ入れるか、食卓で足すかの違いが見えます。スコーンという名から、甘い一枚だけを想像することはできません。
塩味のチーズと、レモネードの甘み
塩味のスコーンは、甘味を抜いただけの付け合わせではありません。ナショナル・トラストのチーズ型は、熟成チェダー、黒コショウ、マスタードを生地に加え、焼く前の上面にもチーズを散らします。温かなスープや煮込みに添えたり、バターを塗って一個を食べたりする型です。ジャムとクロテッドクリームを待つ白い生地とは、食卓での相手も変わります。
オーストラリアのレモネード型では、バターを粉へすり込む代わりに、クリームと甘い炭酸飲料をセルフレイジングフラワーへ注ぎます。料理家ジュリー・グッドウィンの型はレモンの皮も加え、ナイフで粉を液体へ寄せ、少ない手数でまとめます。焼いた温かな一個へ添えるのはレモンカード。甘みと乳の油脂を、飲み物とクリームから生地へ入れる組合せです。
カボチャの黄色と、ユタの揚げパン
オーストラリアのクイーンズランド州立図書館は、フローレンス・ビェルケ=ピーターセンのカボチャ入りスコーンのルセットを、手ぬぐいに印刷された資料とともに紹介します。つぶしたカボチャをバター、糖、卵、小麦粉に混ぜ、高温のオーブンで焼く型です。同じ州の農村女性協会のルセットには、牛乳と粉を合わせる基本型や、デーツを加える変奏もあります。野菜は飾りではなく、生地に水分と色を加える材料です。
さらに米国ユタ州の観光局が「ユタ式スコーン」と呼ぶものは、ソパピーヤに似た揚げパンで、粉糖をかけます。英国のバター生地を炉で焼くスコーンとは加熱方法も食感も異なり、同じ英語名でも別の地域料理です。
朝食のジャガイモ、散策の後の茶
スコットランドのロバート・バーンズ生家博物館のカフェの旧案内には、ポテトのタティー・スコーンを卵やハギスと合わせる朝食と、焼いたスコーンに茶を添える組合せが並んでいました。同じ店の案内でも、朝食の付け合わせと茶の時間の焼き菓子は、違う役割を持っていたのです。
英国南西部では、茶と歩く風景にも結び付きます。コーンウォールのコートヘルはジャムを先に載せるクリームティーを案内し、デヴォンのウォーターズミートは、一九〇〇年頃から茶とスコーンを供してきたと紹介しています。ジャムと乳のクリームを合わせる身近な食べ方が、土地のティールームで受け継がれています。
用語解説
- ベーキングパウダー
- 重曹と反応相手の酸性の成分などを含む膨張剤。水分や熱で気体を生じ、生地を持ち上げる。
- セルフレイジングフラワー
- 膨張剤をあらかじめ混ぜた小麦粉。製品ごとの材料表に合わせて使う。
- チェダー
- 英国に由来するチーズ。熟成した型は塩味と濃い風味を持ち、スコーンにも混ぜる。
- ジュリー・グッドウィン
- オーストラリアの料理家。家庭向けのレモネードスコーンを公開している。
- レモンカード
- 卵、砂糖、レモン汁、バターなどを炊いて作る甘酸っぱいクリーム。
- クロテッドクリーム
- 乳を加熱して生じる濃厚なクリーム。英国のクリームティーでスコーンに添える。
- カランツ
- スコーンなどに使う小粒の干しぶどう。
- フローレンス・ビェルケ=ピーターセン
- クイーンズランドの政治家。カボチャ入りスコーンのルセットを広めた人物。
- ソパピーヤ
- 米国南西部などの揚げた生地。ユタ式スコーンの比較対象。
- エドモンズ
- ニュージーランドで粉や製菓材料と料理書で知られるブランド。
- タティー・スコーン
- ジャガイモを用いるスコットランドのスコーン。朝食などにも添える。
- ハギス
- 内臓肉や穀物などを使うスコットランドの料理。
- ロバート・バーンズ
- 十八世紀スコットランドの詩人。生家の博物館ではスコーンや茶も供される。
- コートヘル、ウォーターズミート
- 英国南西部のナショナル・トラストの施設。
パレードの焼きたて釜焼きスコーンの季節のクリームティーセット/Cream tea de saison
釜焼きならではの香ばしさが小麦とバターの風味を引き立て、外は香ばしく、中はふっくらしっとり。プレーンスコーンは、小麦の豊かな香りと素材本来の味わいを、シンプルだからこそ存分に楽しめる一品です。キャラメル胡桃全粒粉スコーンは、キャラメリゼした胡桃に、粗挽きグラハム全粒粉をあわせたザクッとした食感がアクセント。ほろ苦いキャラメルと小麦の香ばしさが調和した、味わい深い一品です。
あたたかな焼きたてのスコーンには、樋口養蜂園の百花蜂蜜と、なめらかで軽やかな甘さの生クリームをたっぷり添えて。さらに季節限定の和歌山産のブラッドオレンジで作ったマーマレードを合わせることで、蜂蜜のやさしい甘み、軽やかな甘みのクリームのまろやかさ、柑橘のほろ苦く爽やかな余韻が重なり合います。まずは、スコーンそのものの味わいを楽しんだあとに、蜂蜜やクリーム、マーマレードを少しずつ合わせながら、変化する美味しさをゆっくり味わっていただけます。
お飲みものには、南薩摩和紅茶(基本はホットをポット提供)をご用意しました。
華やかな香りと穏やかな渋みが、焼きたてスコーンのわいにそっと寄り添います。
あたたかいスコーンを、紅茶とともにゆっくり楽しむ時間。
季節の味わいを重ねた、心ほどけるクリームティーセットです。
このお菓子に寄せられたお客様の声
いつも パレードさんの お菓子を食べるために
お仕事 がんばっています(父)
パレードさんの おいしいケーキのおかげで
日々 生きられております(娘)
クリームティーセット すごくたのしみにしてました ✨✨
新作 たくさん 生みだしてくださり ありがとうございます!!
チーズケーキも 桃のミルクレープも さいこうです…!!
次は アイス たべに伺います🍨🥄✨✨







